物流業界において、CO2排出量の削減は重要な課題です。物流業界では、この課題に取り組むために、グリーン物流が注目されています。

グリーン物流は、環境への負荷を減らすだけでなく、トラックドライバーの労働環境も改善するなど、多くのメリットがあります。

今回は、グリーン物流の取り組みとその効果について詳しく紹介します。

グリーン物流とは

「ESG」と書かれた文字の周りに、アイコンイラストで「地球」「焼却所」「コンセント」「風力発電機」「リサイクルマーク」「炎」が書かれている

 グリーン物流とは、物流活動における環境負荷低減を目指す取り組みの総称です。

この、輸送時のCO2排出量削減エネルギー使用量削減廃棄物削減など「環境にやさしい物流」を目指しています。

地球温暖化や環境問題への意識の高まりから、企業は環境負荷低減への取り組みが求められています。物流は、CO2排出量の大きな排出源の一つであるため、グリーン物流への取り組みは企業の社会的責任として重要です。

従来の物流は、効率性やコスト削減を重視していました。一方、グリーン物流は、環境負荷低減を第一に考え、効率性やコストとのバランスを図ります

昨今、投資の基準としてESGが指標の一つになるなど注目されています。ESGとは何の略なのか以下を見ていきましょう。

ESGとは

 ESGとは、Environment(環境Social(社会)Governance(ガバナンス)の頭文字を取った略語です。企業が長期的に成長するためには、経営においてこれらの3つの観点を考慮することが重要と考えられています。

地球温暖化や水不足などの環境問題や、人権や差別などの社会問題など、人類はさまざまな課題に直面しています。

2006年にPRI(責任投資原則)が発足して以来、ESGやESG投資に対する社会の関心が高まりました。持続可能な豊かな社会を実現するための取り組みである「ESG」への注目は今後も増加すると予想されています。

PRI(責任投資原則)・・・投資に環境、社会、ガバナンスの視点を組み入れるなどの、機関投資家の投資原則のこと

環境(E: Environment)

 私たちが生活している地球は、人類が経済的な発展を優先させてきた結果、さまざまな種類の環境問題を抱えています。

持続可能な発展を続けるためには、国際的な協力だけでなく、企業や個人も環境問題の解決に向けて取り組む必要があります。

社会(S: Social)

 人類は、皆が安心して生活できる豊かな社会を築くために努力してきましたが、現実には生存や生活が脅かされる社会課題が数多く存在しています。

利益追求による企業や個人の行動がこれらの社会課題の一因となっている場合もあります。

そのため、より豊かな社会を実現するためには、行動の見直しや取り組みが必要とされています。

ガバナンス(G: Governance)

 ガバナンス(企業統治)とは、企業が健全な経営を行うための自己管理体制を指します。

不正会計や不適切な営業活動など、日本や世界各地で社会全体に悪影響を及ぼす企業不祥事が後を絶たない現状です。

企業が自らしっかりとした管理体制を整え、社会の規範やルールを遵守することは、企業と社会の持続的な発展にとって極めて重要です。

グリーン物流の具体的な取り組み

両手で地球儀と葉っぱを包み込むように持っている画像

 グリーン物流は、物流活動におけるCO2排出量や、環境負荷を削減するための取り組みです。

具体的な取り組み例は多岐にわたりますが、主に以下の5つのカテゴリーに分類できます。

輸送手段の効率化

・モーダルシフト

 環境負荷の少ない鉄道や船舶への輸送手段の転換

・共同配送

 複数の荷主の荷物をまとめて配送することで車両台数を削減

・燃料効率の高い車両の導入

 ハイブリッド車や電気自動車など、環境性能の高い車両の導入

・空車走行の削減

 効率的な配送計画の策定や荷物の積み増し

物流拠点の効率化

 ・省エネルギー設備の導入

 LED照明や太陽光発電などの導入

 ・物流センターの集約

 拠点数を減らすことで無駄な輸送を削減

 ・自動化システムの導入

ピッキングや搬送作業の自動化による効率化

梱包材の削減

 ・リサイクル可能な梱包材の使用

 ダンボールやプラスチックなど、再利用可能な素材の利用

 ・3Rの推進

 Reduce(削減)Reuse(再利用)Recycle(再資源化)の推進

その他の取り組み

 ・エコドライブの推進:燃費運転の徹底やアイドリングストップの推進

 ・IT技術の活用:車両管理システムや配送管理システムの導入

 ・従業員の意識改革:環境問題への意識向上のための教育やアナウンス

 ・フードマイレージの削減:地産地消や農産物の輸送距離の短縮

これらの取り組みは、単独で実施するよりも、複数の取り組みを組み合わせることでより効果が期待できます。

グリーン物流は、環境問題解決と持続可能な社会の実現に貢献する重要な取り組みです。企業は、積極的にグリーン物流に取り組むことで、環境と経済の両立を実現できるようになります。

グリーン物流のメリット

グリーン物流の4つのメリット

 グリーン物流のメリットは、環境負荷低減だけではありません。

企業にとって、以下の4つのメリットをもたらします。

グリーン物流の4つのメリット

 ①コスト削減 ②企業イメージ向上 ③イノベーション促進 ④リスク管理強化

それでは、ひとつひとつについて詳しく見ていきましょう。

コスト削減

 グリーン物流は、無駄な輸送やエネルギーの使用を削減することで、コスト削減につながります。具体的には、以下のような効果が期待できます。

・燃料費削減

  燃費向上やエコドライブの推進による燃料費削減

・車両費削減

  輸送効率向上による車両台数削減

・人件費削減

 自動化システム導入による人件費削減

・廃棄物削減

 梱包材の削減による廃棄物処理コスト削減

企業イメージ向上

 環境問題への意識が高まる現代において、グリーン物流に取り組む企業は、顧客や社会から高い評価を得られます。

顧客からの信頼獲得

 環境に配慮した企業姿勢への評価

・社会貢献へのアピール

 SDGsへの貢献による企業価値向上

・ESG経営の推進

 環境・社会・ガバナンスへの取り組み

イノベーション促進

 グリーン物流は、環境問題解決に向けた新たな技術やサービスの開発を促進します。

環境負荷低減技術の開発

 電気自動車や燃料電池車など、環境負荷低減技術の開発

・物流システムの革新

 自動化システムやAI技術など、物流システムの革新

リスク管理強化

 環境規制が強化される中、グリーン物流に取り組む企業は、環境規制違反のリスクを低減できます。

環境規制遵守

 環境規制への対応によるリスク低減

事業継続性の確保

 環境問題への対応による事業継続性の確保

グリーン物流は、環境負荷低減だけでなく、企業にとって様々なメリットをもたらします。初期投資や関係者間の連携など、課題もありますが、これらの課題を克服するために、政府、企業、消費者が協力していくことが重要です。

グリーン物流導入に向けて知っておきたい情報

車のイラストが5個あり、1つだけ緑色。その1つだけを虫眼鏡で見ている画像。

 企業にとって不可欠な存在になりつつあるグリーン物流。
ここからはグリーン物流を成功させるために知っておきたい情報をお伝えしていきます。

法律・規制

 グリーン物流を導入する際には、以下の法律や規制に注意する必要があります。

・環境省「エコドライブ」

 エコドライブとは燃費消費量やCO2排出量を減らし、地球温暖化の防止に寄与できる運転技術や心がけを指す言葉です。

 急発進や加減速の激しい運転を避けるなど、ちょっとした工夫だけで燃費が向上し環境に優しい走りができるため、環境省や経済産業省なども積極的に推奨をしています。

国の節電対策として、物流業界にも影響を与えています。

EU「ユーロ6」

 ヨーロッパ連合(EU)が2014年に施行した自動車の新たな排出ガス規制。 EU指令に基づき、自動車から排出される二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOX)、粒子状物質(PM)などの有害物質の上限値を定めています。

 EU域内で自動車を販売するすべての自動車メーカーに適用され、基準を満たさないと域内で車を販売できない厳しい排ガス規制です。

これらの規制は、一見負担に感じるかもしれませんが、コスト削減やブランドイメージ向上につながる可能性もあります。

法令遵守は面倒な作業かもしれませんが、グリーン物流導入の第一歩とも言えるのです。

先進国・海外の取り組み

 欧州やアメリカなど、先進国では様々なグリーン物流の取り組みが進められています。

・オランダ「ZERO Emission City Logistics」プロジェクト

 都市部の物流でゼロ排出を目指し、電動トラックを導入しました。

・アメリカ ウォールマート

 ウォルマートがソーラーパネル搭載のトラックでCO2排出削減。

これらの取り組みは、グリーン物流が環境貢献だけでなく、ビジネスの持続性にも貢献できることを示しています。

✅日本では・・・

 東京都は、2050年までに世界のCO2排出を実質ゼロにする「ゼロエミッション東京」の実現を目指し、2019年に「ゼロエミッション東京戦略」を公表しました。

この戦略では、2030年までに都内の温室効果ガス排出量を50%削減することを目標としています。

まとめ:未来のグリーン物流

海と山と太陽の風景を丸い水晶のようなもので映している画像

 これからのグリーン物流は、単なる環境への配慮だけでなく、様々な領域にまたがる取り組みが求められます。

・企業同士のコラボレーション

・国や地域、業界全体としての動き

・政策や制度の整備

これらの連携によって、より効果的なグリーン物流の実現を目指しましょう。

筆者の感想

グリーン物流導入には、法律や規制、先進国の取り組みなどを理解しておくことが重要です。そして、未来の物流を担う私たち一人一人が、グリーン物流の重要性を認識し、積極的に取り組んでいくことが求められます。

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