現代社会では、ECの普及により、商品の注文から配送までの迅速なプロセスが要求される一方で、物流業界は人手不足の問題に直面しています。そこで注目されているのが、物流の自動化や省力化を実現する「物流ロボット」です。
今回は、倉庫で使用される物流ロボットの種類や役割を紹介します。
また、物流ロボットを導入することで得られるメリットや、今後の物流業界における未来の形態がどうなるのかも説明していきます。
物流ロボットとは?
物流ロボットは、物流業務における「ピッキング」や「仕分け」といった単純な作業を自動化するためのロボットです。例えば、こんなロボットが活用されています。
物品の運搬・・・運搬ロボット 積み重ね ・・・パレタイズロボット ピッキング・・・棚運送(GTP)型ロボット・自立協働型ロボット 仕分け ・・・ソーターロボット |
それでは、それぞれがどのようなロボットなのか紹介していきます。
◎搬送ロボット
物流や製造現場などで物品や部品を運搬するための自動化されたロボットです。これらのロボットは、プログラムされた経路を自律して移動し、指定された場所から物品を取り上げ、指定された場所に安全に運搬します。
搬送ロボットは、運搬作業を効率化し、作業員の負担を軽減するために広く利用されています。
◎パレタイズロボット
パレット上の荷物や箱を効率的に積み上げたり、整列させたりするためのロボットです。これらのロボットは、特定のパターンや配置に基づいて荷物を適切に積み上げ、パレット上でのスペースの最大限の利用を可能にします。
パレタイズロボットは自動倉庫や物流センターなどで広く使用され、荷物の効率的な積み込みや出荷作業を支援します。
◎棚搬送(GTP)型ロボット
物流倉庫や配送センターなどで使用される自動化されたロボットの一種です。このタイプのロボットは、棚の間を自律して移動し、棚から商品をピッキングして運搬することができます。
GTPとは、”Goods-to-Person”(商品から人へ)の略称です。このロボットは作業者が指定した場所に運ぶために商品を選択し、選択された商品を適切な場所に運搬するために設計されています。 |
このようなロボットは、ピッキング作業の効率化や人間の労働負担の軽減に貢献します。
◎自律協働型ロボット
人間との協働を可能にする自動化されたロボットの一種です。これらのロボットは、人間と同じ作業空間で安全に作業することができ、特定のタスクを自律して実行するだけでなく、人間と協力して作業することも可能です。
例えば、物品の運搬や組み立て作業などに使用されます。自律協働型ロボットは、生産性の向上や作業効率化、作業環境の改善など、さまざまな目的で利用されています。
物流ロボットの役割
物流ロボットは、完全に自動化されたシステムではなく、人との協働を重視したものです。
産業用ロボットアームは、大量の作業を精密に自動で行う「完全無人化」を実現しました。一方、EC需要の増加における個配対応など、複雑な作業や判断が求められる場面では、ロボット単独での運用には限界があります。
そこで注目されるのが、人とロボットの協働による物流システムです。
人が担当するのは、複雑な作業や判断を必要とする部分であり、ロボットは「探す」「歩く」などの単純で繰り返し作業や工数削減に役立つ作業を担当します。
物流ロボットは人と協力して作業を行うことによって、効率的な省人化・省力化を実現する役割を果たしています。
物流ロボット導入のメリット
物流ロボットを導入することで、様々なメリットが期待できます。
ここからは、物流ロボット導入の代表的なメリットを詳しく説明します。
人手不足解消
近年、少子高齢化や労働人口減少の影響により、物流業界でも深刻な人手不足が問題となっています。物流ロボットは、人手不足解消に大きく貢献することができます。
・24時間365日稼働可能
・重労働や危険な作業を自動化
・人材不足による納期遅延やサービス低下を防ぐ
特に、人件費の高い都市部や、夜間や早朝など人手が確保しにくい時間帯の作業において、物流ロボットの導入は有効です。
労働環境の改善
物流現場は、重労働や長時間労働、危険作業などが多く、労働環境が厳しいと言われています。物流ロボットを導入することで、労働環境の改善が期待できます。
・重労働や危険な作業を自動化
・労働時間の短縮
・ワークライフバランス向上
・従業員のモチベーション向上
従業員の健康と安全を守ることは、企業にとって重要な課題です。物流ロボットは、労働環境の改善を通じて、従業員のウェルビーイング向上にも貢献することができます。
ウェルビーイングとは心身ともに満たされた状態を表します。心身と社会の調和を意味する幅広い概念です。 |
物流コストの削減
物流コストは、企業にとって大きな負担となっています。物流ロボットを導入することで、物流コストの削減が期待できます。
・人件費削減
・作業効率化によるコスト削減
・ミスや事故の防止による損失削減
・在庫管理の効率化による在庫コスト削減
特に、人件費や電力料金の高騰が続く状況において、物流コスト削減は企業にとって大きな課題です。物流ロボットは、導入当初は費用がかかりますが、長期的に見るとコスト削減効果をもたらすことができます。
作業の効率化
物流ロボットは、人間よりも高速・高精度で作業を行うことができます。物流ロボットを導入する事で、以下のような作業効率化効果が期待できます。
・ピッキング作業の高速化・高精度化
・仕分け作業の自動化
・搬送作業の効率化
・在庫管理の効率化
作業効率化は、納期短縮やサービス向上にもつながります。顧客満足度向上や競争力強化にも貢献することができます。
ミスや事故の防止
物流現場は、人によるミスや事故が発生しやすい環境です。物流ロボットを導入する事で、ミスや事故防止効果が期待できます。
・人為的なミスによる誤出荷や誤仕分けの防止
・フォークリフトによる事故の防止
・作業員の疲労による事故の防止
ミスや事故は、企業にとって大きなリスクです。物流ロボットで安全性を向上させることによって事故や損失を減らし、直接的なコスト削減にも繋がります。
安全性を最重要視する企業にとって、物流ロボットは欠かせない存在となるでしょう。
データ収集・分析によるさらなる効率化
物流ロボットは、作業中に様々なデータを収集・分析することができます。これらのデータを活用することで、さらなる効率化が期待できます。
・作業ルートの最適化
・在庫管理の最適化
・メンテナンス時期の予測
物流ロボットは、大量のデータを収集・分析することで、無駄や改善点を可視化し、物流全体の効率化に大きく貢献します。物流ロボットは、データ活用によるイノベーションを促進することができます。
物流ロボット導入には、初期投資費用や導入・運用コストなどの課題もありますが、上記のような様々なメリットをもたらすことができます。導入を検討する際には、自社のニーズや課題を明確にし、メリットとデメリットを慎重に比較検討することが重要です。
物流ロボットは、物流業界における課題解決に貢献する重要なツールであり、今後もますます進化していくことが予想されます。
期待される物流の全自動化
物流業界では人手不足が深刻化しており、この課題に対処するために物流システムの完全自動化が求められています。物流ロボットの技術も着実に進歩し、倉庫内の作業を全自動化するためにロボット同士の連携が可能になってきました。
実際に、中国では日本のベンチャー企業の技術を駆使した全自動化物流センターが稼働しており、商品の形状や位置を正確に認識してピックアップする新技術が導入されています。
また、既存の技術を組み合わせることで、自動倉庫なども活用され、全自動の物流センターが実現されています。
さらに、「ラストワンマイル」と呼ばれる配送の最終段階においても、自動化に向けた研究が進められています。
ラストワンマイルとは、最終拠点からエンドユーザーへの物流サービスのことをいいます。 「最後の1マイル」という距離的な意味ではなく、お客様へ商品を届ける物流の最後の区間のことを意味します。 |
出前ロボットやドローン、自動運転車などを活用した配送が大手通販メーカーなどで研究されており、配達の自動化を実現するためには法律の問題などの障壁を乗り越える必要がありますが、人手不足の問題が深刻化している現状から、全自動化の実現が待たれています。
まとめ
物流業界では、人手不足やEC取引の増加などの状況が続く中、物流ロボットの市場がさらに拡大することが見込まれます。
今後は、展示会において物流ロボットのデモンストレーションが増加し、ベンチャー企業が新しい製品を積極的に投入する動きが活発化するでしょう。
さらに、物流ロボットの導入形態も多様化し、リースやサブスクリプションなど、ユーザーにとってより手軽な選択肢が提供されることが予測されます。
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筆者の感想物流ロボットの導入促進の背景には、物流業界の人手不足と高まる物流の需要があるからだと分かります。少子高齢化が進む日本では、人の力に頼らずとも正確でスピーディな物流業務を行うために、自動化・省力化を図ることが重要だと分かりました。