近年、ますます成長を続けるコスメ市場。その裏側には、製品を製造から消費者に届けるまでの物流を支える「コスメ物流」の存在があります。
通常の物流とは異なる様々な特徴を持つコスメ物流について詳しく解説していきます。

そもそもコスメ物流とは?

ピンクを基調としたコスメ道具の画像

 コスメ物流とは、化粧品を製造から販売・消費者に届けるまでの物流業務を指します

コスメ物流は通常の衣服や文房具などの物流と違い、法律に定められた環境下での物流が求められます。
通常の物流と比べて、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬法)に基づく厳格な管理が必要となります。
正式には、化粧品製造業許可のある倉庫で管理された商品を指す物流です。

コスメ物流で取り扱われる商品区分は以下の表の通りです。

💡化粧品物流で取り扱われる商品区分一覧

商品区分代表的な商品例保管・管理上の注意点
メイクアップ   ファンデーション、コンシーラー、パウダー、チーク、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、リップコスメ温度・湿度変化に注意、直射日光を避ける
ヘアケアシャンプー、トリートメント、コンディショナー、ヘアオイル、ヘアミルク、ヘアワックス、ヘアスタイリング剤、ヘアカラー剤、白髪染め温度・湿度変化に注意、直射日光を避ける
スキンケアクレンジング、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、美容液、パック、シートマスク、日焼け止め温度・湿度変化に注意、直射日光を避ける
輸入化粧品海外ブランドのメイクアップ商品、海外ブランドのスキンケア商品、海外ブランドのヘアケア商品原産国、成分、表示内容などを確認
フレグランス香水、オーデコロン、ボディミスト、ルームフレグランス温度・湿度変化に注意、直射日光を避ける、揮発性の高いものは漏れの注意
ボディケアボディソープ、ボディローション、ボディミルク、バスクリン、ソープ温度・湿度変化に注意、直射日光を避ける
メンズコスメ    洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、シェービング剤、アフターシェーブローション温度・湿度変化に注意、直射日光を避ける
ネイルケアベースコート、トップコート、ネイルカラー、ネイルリムーバー、ネイルケア用品、ネイルコスメ温度・湿度変化に注意、直射日光を避ける、揮発性の高いものは漏れの注意
ツール
アクセサリー
メイクブラシ、メイクスポンジ、パフ、ヘアブラシ、コーム、コットン、綿棒湿気や汚れに注意、形状や材質を考慮した保管
その他ベビーコスメ、男性用ヘアケア、デオドラント、サプリメント、ヘアアクセサリー、コスメ雑貨商品特性に合わせた保管・管理

具体的には、下記の見出しの要件を満たす必要があります。一緒に学んでいきましょう。

コスメ物流の役割と課題

リボンをかけた箱の中にはコスメ道具。それを抱える人の手元の画像

 コスメ物流は、化粧品を消費者に届けるまでの重要な役割を担っています。具体的には、以下の役割があります。

◎品質管理
 化粧品は、品質が劣化しやすい商品です。そのため、コスメ物流では、適切な温度・湿度管理や衛生管理を行い、商品の品質を維持する必要があります。

◎在庫管理
 コスメ物流では、多品種小ロットの製品を効率的に管理する必要があります。そのため、WMSなどのシステムを活用して、在庫を正確に把握し、必要なものを必要な時に出荷できるようにする必要があります。

化粧品は、ブランド、種類、色、香りなど、多品種小ロットな商品が多い点が特徴です。
そのため、コスメ物流では、倉庫のレイアウトやピッキング作業など、効率的な在庫管理と配送を実現するための仕組みが必要となります。

◎配送
 コスメ物流では、消費者に商品を迅速かつ丁寧に配送する必要があります。
そのため、配送業者との連携を強化し、効率的な配送体制を構築する必要があります。

化粧品製造業許可の取得

 化粧品製造業許可とは、医薬品・医療機器等の品質・有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)に基づき、都道府県知事から取得する許可です。化粧品の保管、包装、表示を行う事業者に対して義務付けられています。

コスメ物流において、化粧品製造業許可の取得は、法令遵守だけでなく、顧客満足度向上や事業拡大にも繋がる重要な要素です。

許可の種類は、以下の2つに分類されます。

・化粧品販売業許可:化粧品の販売を行う事業者向け
・化粧品製造販売業許可:製造と販売の両方を行う事業者向け

コスメ物流に関わる事業者は、主に製造業許可または製造販売業許可を取得する必要があります。化粧品製造業許可の取得には、以下の手順が必要です。

✅化粧品製造業許可の取得方法

化粧品製造業許可の取得には、以下の手順が必要です。
許可申請書類の作成 
許可申請書類には、以下の内容を記載する必要があります。
・事業者の基本情報・責任者の氏名・施設の概要・製造・販売する化粧品の種類・品質管理体制
施設調査では、都道府県知事の担当者が、実際に施設を訪れて、許可申請書類の内容と照らし合わせ、法令遵守状況を確認します。

・登記事項証明書(6ヵ月以内のもの)
・責任技術者の雇用契約書の写し又は使用関係を証明する書類
・責任技術者の資格を証する書類(薬剤師免許証の写しなど)
許可証の交付には、通常数ヶ月〜半年前後かかります。

 ◎都道府県知事への提出◎施設調査◎許可証の交付

温度や湿度管理された適切な環境での保管

 華やかな世界を彩る化粧品は、デリケートな商品です。高温多湿な環境では品質が劣化し、思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。コスメ物流において、温度・湿度管理は、製品の品質を維持し、お客様の満足度を高めるために不可欠な要素です。

そのため、適切な温度・湿度管理ができる倉庫が必要です。具体的には、以下の条件を満たす必要があります。

✅温度15~25℃ 
・スキンケア製品:15~25℃ 
・メイクアップ製品:同上 
・フレグランス:同上
✅湿度50~60% 
・スキンケア製品:50~60%
・メイクアップ製品:40~50%
・フレグランス:30~40%

衛生管理:化粧品は、衛生管理が徹底されていないと、カビや細菌が繁殖してしまう可能性があります。そのため、清潔で衛生的な倉庫が必要です。具体的には、以下の対策が必要です。
 ・定期的な清掃、消毒 ・防虫、防鼠対策 ・入退去管理

コスメ物流事業者は、製品の特性を理解し、適切な温度・湿度管理を徹底することで、お客様に高品質な化粧品を提供し、事業の成功に繋げることができます。

コスメ物流のアウトソーシングとは

破った段ボールの先に「Outsourcing」の文字

 コスメ物流のアウトソーシングとは商品の保管や顧客に合わせた配送までを一括で行うサービスです。
企業が商品管理に限界を感じるほど多岐にわたる商品を倉庫で管理し、顧客に品質を保証したまま迅速に配送できます。

専門的なコスメ物流のプロセスを理解した業者がその業務を請け負うため、同梱物の準備や出荷手配もスムーズに行えます。ただし、業者ごとに倉庫の収容能力や取り扱える商品数には限界があり、そのため自社製品を管理できる適切な倉庫を見つけることが重要です。

化粧品物流アウトソーシングの業務内容

 化粧品物流アウトソーシングでは、主に以下の業務を外部業者に委託することができます。

倉庫保管と在庫管理

◎倉庫の選定と管理
 化粧品に適した温度・湿度管理、セキュリティ管理、衛生管理が徹底された倉庫を選定・管理します。

◎在庫の受入・検品・保管
 納入された商品を検品し、適切な温度・湿度で保管します。

◎出荷指示の確認・ピッキング
 出荷指示を確認し、誤発送を防止しながら効率的にピッキングを行います。

◎出荷・配送
 適切な梱包を行い、迅速かつ安全に配送します。

◎在庫管理システムの運用
 WMS (Warehouse Management System) などのシステムを活用し、在庫の入出庫、在庫状況の把握、発注などを効率的に管理します。

品質管理

◎温度・湿度管理
 化粧品は温度や湿度によって品質が劣化しやすい特性があります。そのため、適切な温度・湿度を維持する環境で保管・管理します。

◎衛生管理
 倉庫内を清潔に保ち、害虫やカビの発生を防ぎます。

◎品質検査
 商品の品質を検査し、問題がある場合は出荷を停止します。

◎トレーサビリティ管理
 商品の製造元から消費者に至るまでの履歴を管理し、問題が発生した場合の原因究明や回収を迅速に行います。

付加価値サービス

◎ギフトラッピング
 ギフト用のラッピングを行い、顧客満足度向上に貢献します。

◎サンプル同梱
 商品購入時にサンプルを同梱することで、顧客の購買意欲を高めます。

◎商品情報の印字
 商品パッケージに商品情報や使用方法などを印字します。

◎アフターサービス
 商品の修理や交換などのアフターサービスを行います。

まとめ

紫を基調にしたコスメ道具の画像

 コスメ物流は、華やかなコスメ業界の裏側を支える重要な役割を担っています。

通常の物流とは異なり、法令遵守や品質管理、多品種小ロットへの対応など、様々な課題を抱えています。
近年、ますます成長を続けるコスメ市場において、コスメ物流アウトソーシングは、これらの課題を解決し、効率的な物流を実現する有効な手段として注目されています。

コスメ物流アウトソーシングのメリットは、
・コスト削減、効率化、品質向上、リスク軽減、コア業務への集中

一方、デメリットとしては、
・コスト増加、情報漏洩のリスク、コミュニケーションコスト、品質管理の徹底

などが挙げられます。

コスメ物流アウトソーシングを検討する際には、これらのメリットとデメリットを理解し、自社の状況に合った業者を選ぶことが重要です。化粧品物流アウトソーシングを活用することで、企業は物流業務の負担を軽減し、コア業務に集中することができます。

コスメ物流アウトソーシングを検討している企業は、ぜひこの機会に専門業者に相談することをおすすめします。

筆者の感想

コスメは人の肌に直接触れるものであり、製造から物流、お客様の手元に届くまできめ細やかで丁寧な作業を必要とすることが分かりました。専門的な知識やノウハウを持つ業者に委託することで、より高品質な物流を実現することができ、顧客満足度向上にも繋げることができると思います。

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