近年、グローバル化が進む中で、海外との取引が活発化しています。しかし、海外貿易には複雑な手続きやリスクがつきもの。
そんな課題を解決する切り札として注目されているのが「保税」という制度です。
このガイドでは、保税とは何か、保税上屋と保税運送の役割まで詳しく解説します。
保税制度を理解することで、貿易コストの削減、通関手続きの効率化、リスクの軽減など、様々なメリットを得ることができます。
保税を理解することで、あなたの海外貿易は大きく変わるかもしれません!
保税とは?
まずはじめに、輸出入について学ぶ際に欠かせない「保税とは何か?」についてお話していきましょう。
保税とは、簡単に言えば「関税を払わずに外国の貨物を保管できる制度」です。
外国貨物は、保税地域外の場所に置くことができません。(関税法代30条より)
保税地域とは外国貨物 (輸入貨物、輸出貨物、通過貨物) を関税を支払わずに保管できる場所です。
例えば、
●国内にありながら、外国と同じ扱いを受ける場所
●関税や消費税を支払わずに貨物を保管できる
●通関手続きを完了するまでの間、一時的に荷物を預けることができる
・・・こんな場所が保税地域です。
保税地域の具体的な例としては、保税上屋や保税倉庫などがあります。
ちなみに・・・
この「保税上屋」や「保税倉庫」といった呼び方は、関税法改正で「保税貯蔵場」に一本化されました。
しかし、貿易関係者、物流関係者の間では今でも「保税上屋」と呼ばれることがあります。
★関税について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!
保税のメリットとデメリット
ここでは、保税のメリットとデメリットをそれぞれご紹介します。
保税のメリット
●検品・加工・仕分け:
輸入前に貨物の状態を確認したり、加工や仕分けを行ったりする
●輸出貨物の集荷:
複数の輸出貨物を一括で集荷し、効率的に輸出する
●物流コストの削減:
国内の複数の場所を効率的に移動することで、輸送コストを削減
●通関手続きの簡略化:
複数の通関手続きをまとめて行うことで、時間と手間を省く
●リスクの軽減:
貨物の紛失や盗難などのリスクを最小限に抑える
保税のデメリット
●税関の許可が必要
保税地域で貨物を保管・運送する際には事前に税関の許可が必要
●税関の厳格な監督下で行われる
貨物の管理や移動に制限があり、常に税関の許可を得て手続きを行う
●保税地域外に貨物を持ち出すには、通関手続きが必要
保税のメリットを活かすためには保税地域内で完結する運用が必要
●専門知識が必要
保税制度は複雑なため、利用には専門知識が必要
★保税制度を利用するかどうかは・・・
■貨物の種類
■貿易量
■コスト
■時間
・・・など、様々な要素を考慮して判断しましょう!
保税上屋ってなに?
それでは、保税上屋とはなにか?その説明をしていきましょう。
保税上屋の定義
保税上屋とは、国内法上外国貨物とみなされる貨物を、関税を支払わず保税のまま一定期間保管できる場所です。まるで海外の倉庫が国内にあるようなイメージですね。
保税上屋で保管する貨物の例 ●輸入貨物の通関待ち ●輸出貨物の集荷 ●国内貨物の一時保管 |
保税上屋の役割
保税上屋の役割は、単なる倉庫ではありません。
保税上屋が担う役割は以下の4点です。
①通関手続きの簡素化:
煩雑な通関手続きを代行し、時間とコストを削減します。
②在庫管理の効率化:
一括管理により、在庫状況を把握し、効率的な出荷を実現します。
③リスク軽減:
盗難や破損などのリスクを軽減し、貨物の安全を守ります。
④貨物の待機場所:
輸出・輸入貨物が通関手続きを完了するまでの“待機場所”として機能します。
保税上屋の存在~物流の円滑化と安全を守る~
保税上屋は一見ただの倉庫に見えますが、実は国際物流を支える重要な存在です。
もし上屋がなければ、以下のような問題が発生します。
■もしも保税上屋がないと・・・ 輸入許可前の貨物の保管場所がない: 航空機や船から降ろした貨物を一時的に保管する場所がないため、通関手続きが遅延し、物流全体に影響が出ます。 輸出許可前の貨物の保管場所がない: 貨物を事業者の施設に保管する必要が生じ、許可取得までの期間、スペースや管理コストが負担となります。 通関手続きの遅延: 貨物の保管場所と通関手続きを行う場所が異なる場合、移動に時間がかかり、通関手続き全体が遅延します。 違法な輸出入の増加: 貨物の検疫や検査を行う場所がないため、違法な物品の輸出入が検知しづらくなり、社会に悪影響を及ぼす可能性があります。 もし上屋がなければ、違法な貨物が国内に持ち込まれるリスクが高くなり、国民の安全や経済活動に大きな影響を与えてしまう可能性があります。 |
このように、上屋は物流の効率化だけでなく、安全な貿易環境の維持にも重要な役割を果たしているのです。
保税上屋は、まさに物流の影の立役者と言えるでしょう。
保税上屋の重要性を理解することで、物流の仕組みや国際貿易への理解を深めましょう!
保税運送とは?
保税運送とは、輸入貨物を保税地域から、他の保税地域に運送することです。保税地域間であれば、移動する際に関税の支払いを保留(保税)したままの状態で運送できるので、手続きをスムーズに行うことが可能です。
簡潔に言うと、保税運送は関税を支払わずに外国貨物を国内で運ぶ制度です。
保税運送が必要なケース
保税運送が必要なケースは以下のような場合です。
●輸入貨物を別の場所に移動したい。
●輸出貨物を集荷したい。
●国内貨物を別の場所に移動したい。
●物流コストを削減したい。
●通関手続きを簡略化したい。
●貨物の紛失や盗難などのリスクを軽減したい。
保税上屋と保税運送
保税上屋と保税運送は国際物流を支える2つの重要な制度です。
保税上屋は、保税運送の出発地や到着地として利用されます。
具体的には・・・
●輸入貨物を保税上屋で保管し、その後別の保税上屋へ保税運送する。
●保税運送で運ばれてきた貨物を保税上屋で保管する。
●保税上屋で保管していた貨物を保税運送で輸出する。
このように、保税上屋と保税運送は連携しています。
保税上屋と保税運送は国際物流を支える重要なパートナーと言えるでしょう。
まとめ
保税制度は、国際物流の効率化と安全性確保に不可欠な存在です。そして、保税上屋と保税運送は、互いに連携し、複雑な通関手続きを簡略化し、貨物の安全な保管・運送を実現します。
最後に、保税制度を活用することで、得られるメリットをまとめましょう。
保税制度を活用するメリット ●物流コストの削減 ●通関手続きの簡略化 ●リスクの軽減 ●在庫管理の効率化 |
保税は、様々な業種・業態で活用することができます。
輸入・輸出に関わるすべての人にとって、保税は必須の知識と言えるでしょう。
保税制度は非常に奥が深いものだと感じました。保税には関税や通関手続きなど、複雑な要素が絡み合っていて、全てを理解するには時間がかかるかもしれません。
保税上屋や保税運送の関係など、それぞれの役割を理解し把握することで保税制度の全体像が見えてきます。この記事が、国際貿易に関わる人たちにとって、保税制度を理解するきっかけになれば嬉しいです。