「運送」と「運搬」
これらの言葉は、日々の業務で使われ、物流やビジネスシーンで重要な役割を果たしています。

一見、同じ意味を持つように思えますが、実は明確な違いが存在します。

この記事では、「運送」と「運搬」の両方を理解し、活用するための情報を提供します。

「運送」と「運搬」の基本的な違い

大きな段ボールを3つ持っている人の画像

 物流業界で頻繁に使用される「運送」と「運搬」。
それぞれの言葉のニュアンスを理解し、適切な使い分けることが、物流の最適化とコスト削減に繋がるのです。

「運送」と「運搬」の定義

運送
・人や荷物を、ある場所から別の場所へ運ぶ行為を指します。法令で定められた定義に基づき、
 許認可を受けた事業者のみが行うことができます。

運搬
・人や荷物を、ある場所から別の場所へ移動させる行為を指します。運送のように法令上の規制はなく、
 個人や企業が自由に行うことができます。

具体的な例

運送
・宅配業者が荷物を自宅まで届ける
・引っ越し業者が家具を新居へ運ぶ
・トラックで商品を配送センターから店舗へ運ぶ

運搬
・自家用車で買い物袋を家に運ぶ
・従業員が倉庫内で荷物を移動させる
・イベントスタッフが会場設営のために機材を運ぶ

適切な言葉の選択

 物流に関わる業務においては、状況に応じて適切な言葉を選択することが重要です。

運送
・法令に基づく手続きが必要な場合、荷物の破損・滅失に対して責任を負う必要がある場合、
 専門的な知識や技能が必要な場合

運搬
・法令に基づく手続きが不要な場合、荷物の破損・滅失に対する責任が限定的な場合、
 専門的な知識や技能がなくてもできる場合

運送と運搬の具体的な使い分け例

運送と運搬の具体的な使い分け例

 ビジネスシーンにおいて、「運送」と「運搬」の使い分けは、
状況によって明確な線引きがあるわけではありませんが、一般的には以下のよう区別されています。

運送
・大量の荷物を専門的な車両で運ぶ場合
・法令に基づく手続きが必要な場合
・荷物の破損・滅失に対して責任を負う必要がある場合
・専門的な知識や技能が必要な場合

◎具体的な例
・トラックで商品を配送センターから店舗へ運ぶ
・コンテナ船で海外から商品を輸入する
・航空機で精密機械を輸送する
・引っ越し業者が家具を新居へ運ぶ

運搬
・少量の荷物を軽自動車やバイクで運ぶ場合
・法令に基づく手続きが不要な場合
・荷物の破損・滅失に対する責任が限定的な場合
・専門的な知識や技能がなくてもできる場合

◎具体的な例
・自家用車で買い物袋を家に運ぶ
・従業員が倉庫内で荷物を移動させる
・イベントスタッフが会場設営のために機材を運ぶ
・バイクで配達を行う

注意点
上記はあくまで一般的な使い分け例であり、状況によって異なる場合があります。

使い分けの重要性

 「運搬」と「運送」を正しく使い分けることは、以下のような点で重要です。

契約内容の明確化
契約書において、物流業者に依頼する業務内容を明確にするために、
「運送」と「運搬」を適切に使い分けることが重要です。

●法令遵守
法令に基づく手続きが必要な場合は、「運送」と明記することで、
法令遵守を明確にすることができます。

コスト削減
状況に応じて適切な言葉を選択することで、必要なコストを抑えることができます。

物流のどの段階で使われるか

 物流における「運送」と「運搬」の使い分けは、荷物の移動範囲だけでなく、
物流の各段階においても区別されています。

製造工場から倉庫への移動
運搬:工場内での部品の移動、完成品を倉庫への搬送など、工場構内における荷物の移動を指します。
・主にフォークリフトやコンベヤなどの設備を用いて行われ、短距離の移動が一般的です。

倉庫内の荷物の移動
運搬:倉庫内における荷物の仕分け、ピッキング、梱包など、倉庫業務における荷物の移動を指します。
・手作業やパレット運搬車、自動倉庫システムなどを活用して行われます。

倉庫から顧客への配送
運送:倉庫から顧客への商品配送を指します。
・トラック、鉄道、航空機などの輸送手段を用いて行われ、中長距離の移動が一般的です

運送と運搬の選択基準と意識すべきポイント

女性の手に「運送」「運搬」と書かれている画像

 運送と運搬の選択は、以下の要素を総合的に判断することで、最適な方法を選ぶことができます。

運搬と運送のコスト、時間帯、路線等による選択基準

コスト
運送:法令に基づく手続きや専門的な知識・技能が必要なため、
運搬よりもコストが高くなる傾向があります。
運搬:比較的安価に利用できますが、荷物の破損・滅失に対する責任は限定されます。

時間帯
運送:時間帯に制限がある場合がありますが、深夜早朝でも運送可能な場合もあります。
運搬:時間帯に制限がない場合が多いですが、深夜早朝は営業していない業者もあります。

路線
運送:全国各地への輸送が可能ですが、一部地域への輸送は制限される場合があります。
運搬:輸送範囲が限られる場合が多いです。

荷物の種類
運送:危険物や精密機械など、特別な取り扱いを必要とする荷物も輸送可能です。
運搬:一般的な荷物のみの輸送となります。

責任
運送:荷物の破損・滅失に対して責任を負う必要があります。
運搬:荷物の破損・滅失に対する責任は限定されます。

その他
運送:保険加入が義務付けられている場合があります。
運搬:保険加入は任意です。

上記に加え、以下の点にも注意する必要があります。

納期:荷物をいつまでに届ける必要があるのか
荷物の追跡:荷物の状況を把握できるかどうか
顧客満足度:顧客にどのようなサービスを提供したいのか

まとめ

トラックから段ボールがたくさん出ているイラスト

 「運送」と「運搬」を正しく理解し、使い分けることは、物流のあらゆる場面で重要です。

この記事を参考に、それぞれの言葉の意味の違いを理解し、状況に応じて適切な言葉を選択することで、
物流の効率化とコスト削減、そしてビジネス全体の精度向上を実現しましょう。

筆者の感想

今回の記事を通して、一般的には同義語と捉えられがちな「運送」と「運搬」ですが、業界内では明確な区別が存在し、その使い分けが物流の効率化やコスト削減に大きく影響することが分かりました。
物流に関わる全ての方にとって、この知識が業務の精度向上や新たな発見に繋がれば幸いです。